面接の場では、話の内容以上に、立ち居振る舞いや言葉づかいが印象を左右します。どれほど経験が豊富でスキルがあっても、第一印象で悪い印象を与えてしまうと、その後の評価に影響することがあります。特にはじめて面接を受ける方や、久しぶりに転職活動を再開する方のなかには、「どの程度マナーに気を配ればいいのか」と不安を感じる方もいるでしょう。
本記事では、面接に臨む前の準備から当日の所作、終了後の対応に至るまで、基本的なマナーを段階ごとにわかりやすく解説します。自分の魅力を正しく伝えるためのポイントを押さえて、面接を成功へとつなげましょう。
面接前に整えるべきポイント

面接では、当日の会話だけが評価対象ではありません。事前の準備や心構えによって、落ち着いた対応が可能になります。以下の点を確認しておくことで、本番での失敗を避けやすくなります。
服装と身だしなみは、第一印象の要です。学生であればリクルートスーツ、社会人であれば落ち着いた色合いのビジネススーツを選びましょう。白いシャツにシワがないか、靴に汚れがないかも要チェックです。髪は顔がはっきり見えるように整え、派手なヘアカラーやネイルは避けてください。爪の長さや香りの強さも清潔感に影響するため、気を配っておくと安心です。
持ち物の準備も欠かせません。履歴書や職務経歴書の控え、黒のボールペン、メモ帳、指定書類などは、前日までに揃えておきましょう。折れやすい書類はクリアファイルに入れて、A4サイズが収まるビジネスバッグで持参するのが基本です。(→志望動機の書き方のコツはこちら)
訪問先についても事前にしっかり確認しておきましょう。住所やビル名、受付場所まで把握しておくことで、当日に迷うリスクを減らせます。時間に余裕を持って行動できるよう、ルートや所要時間を事前に調べておくことをおすすめします。
受付から面接室に入るまでの基本動作
面接当日は、約束時間の5~10分前に受付を済ませるのが理想です。ただし、あまりにも早く着きすぎると企業側に迷惑をかけることもあるため、15分以上前に到着した場合は近くで時間調整をしましょう。
受付では、緊張していても笑顔を忘れず、はっきりと名乗ります。「本日〇時に面接のお約束をいただいております、〇〇と申します」と伝えましょう。案内される際も丁寧な姿勢で対応することが大切です。面接官以外の社員にも好印象を与えられるよう意識しておくと安心です。
入室時には、ドアを3回ノックし、「どうぞ」の返答を待ってから「失礼いたします」と声をかけて入りましょう。ドアは静かに閉め、面接官の方に向き直ってから挨拶をします。「〇〇と申します。本日はよろしくお願いいたします」と、落ち着いた声で伝えてください。
面接官に「おかけください」と言われたら、「失礼いたします」と一言添えてから椅子に座ります。背筋を伸ばし、両手を膝の上に置いて、自然で丁寧な姿勢を保つことがポイントです。
面接中に意識したい話し方と態度のコツ

面接では、自分の考えや経験を伝えるだけでなく、相手の話をしっかり聞く姿勢も問われます。面接官が話している最中は話を遮らず、うなずきながら聞くことで誠実な印象を与えることができます。
アイコンタクトは自然に行いましょう。相手の目をじっと見つめすぎる必要はありませんが、視線をそらしすぎると不安そうに見えることもあります。落ち着いて話せるように、ゆっくりと呼吸を整えてから答えるとよいでしょう。
自分の話す内容にも注意が必要です。語尾が曖昧になると、自信がない印象につながることがあります。「〜と思います…」などと語尾を濁さず、落ち着いたトーンでしっかり伝えるようにしましょう。
ネガティブな内容を話すときには、言い換えを工夫して前向きな姿勢を示してください。たとえば「できなかった」ではなく、「この経験を通して改善点が見えた」などのように表現を変えることで、柔軟性や成長意欲を伝えることができます。
質問への回答は簡潔に、かつ的確に行うことが理想です。予想外の質問が来た場合も、焦らず「少しお時間をいただけますか」とひと言添えて考える余裕を持ちましょう。
面接終了後も気を抜かず丁寧な対応を
面接が終わったあとの行動も、評価の一部になります。面接官から「ありがとうございました」と言われたら、席を立ち、「本日はありがとうございました」と感謝の気持ちを伝え、30度ほどの角度でお辞儀をしてください。
ドアの前では再度一礼してから静かに退室します。ドアの開閉にも配慮し、音を立てずに閉めるように心がけましょう。建物を出るまでの間にも、社員とすれ違うことがあります。その際には軽く会釈をするなど、礼儀を忘れずに行動することが望ましいです。
面接でよくあるマナー違反とその対策

敬語の誤用はよく見られる失敗のひとつです。たとえば「ご苦労さまです」は目上の人に使う表現ではありません。「お疲れさまでした」を使いましょう。無理に難しい敬語を使わず、正しい言葉を選ぶことが大切です。
緊張からくる姿勢の崩れや落ち着きのなさも注意すべきポイントです。背筋を伸ばし、手は膝の上に置くことで自然な姿勢が保てます。また、表情が硬くなったり声が小さくなったりしないよう、面接前に深呼吸を取り入れると落ち着きを取り戻せます。
服装の乱れや遅刻も大きなマイナスポイントになります。出発前には身だしなみを鏡で確認し、遅れそうな場合は必ず連絡を入れるなど、誠意ある対応を意識してください。くなり、声も出やすくなります。表情や話し方も練習すれば、必ず上達しますので、事前に家族や友人に聞いてもらうのも良い方法です。
業界別の面接マナーの注意点
面接の基本マナーは共通していても、業界によって重視されるポイントや雰囲気には違いがあります。事前にその業界ならではの特徴を把握しておくことで、より的確な準備が可能です。代表的な業界ごとに、面接時に意識したいマナーの傾向を確認しましょう。
IT・Web業界の場合
服装の自由度が高い印象のある業界ですが、面接ではビジネススーツが基本です。カジュアルな雰囲気があっても、最初はフォーマルな服装を選ぶのが無難です。面接では「論理的に話せるか」「技術的な内容を分かりやすく説明できるか」が見られる傾向があるため、丁寧で簡潔な表現を意識するとよいでしょう。相手の専門知識レベルを考慮した話し方もポイントになります。
医療・介護業界の場合
清潔感や礼儀正しさが特に重視される業界です。服装はもちろん、髪型や爪の長さ、話し方まで細かくチェックされることがあります。面接中の姿勢や表情にも気を配り、柔らかい印象を与えることが大切です。相手の話をしっかり聞く姿勢や、落ち着いた受け答えが求められる場面が多くなります。
営業・販売業界の場合
コミュニケーション力と印象の良さが重視されやすい業界です。明るい声での挨拶や、自然な笑顔、はきはきとした受け答えが高く評価される傾向があります。身だしなみも含め、第一印象でのインパクトが重要になるため、事前に鏡で表情の練習をしておくと安心です。
クリエイティブ業界(デザイン・広告など)の場合
個性や発想力が求められる一方で、ビジネスマナーの基本は守ることが前提となります。服装は業界によって許容範囲が広いこともありますが、面接の場ではやはり清潔感を重視した装いが基本です。作品ポートフォリオなどの持参が必要な場合も多いため、提出物の扱い方や説明の順序など、事前の準備が重要になります。
金融・公務員業界の場合
堅実さや信頼性が求められる業界では、マナーの細部まで見られる傾向があります。言葉遣いや態度に慎重さを持ち、落ち着いた受け答えを心がけましょう。目立つ装飾や髪色は避け、控えめで上品な印象を意識した身だしなみが望まれます。姿勢や礼の角度など、基本動作も丁寧に行うことが大切です。
おわりに
面接の場では、自分を良く見せようとすること以上に、「相手に安心感を与えること」が大切です。丁寧な準備や基本マナーの積み重ねが、結果として評価につながります。
初めての面接や久しぶりの就職活動でも、ポイントを押さえておけば落ち着いて臨むことができます。大切なのは完璧を目指すことではなく、誠実な姿勢を持って向き合うこと。小さな一歩の積み重ねが、自分らしい未来につながっていきます。